ひょうたん会議

「楽しもう、ちょっとマジメな話。」をモットーに、“重要だけど緊急じゃないこと”をテーマにした飲み会スタイルの少人数制ゆるゆるセッション。

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責任感と対にあるもの

はじめての方へ→ ひょうたん会議とは?
学生時代、海外でワークキャンプを行う学生団体FIWCに所属していました。いくつか活動地がある中で、自分はフィリピンで活動していました。
毎年夏、学生20人くらいで1ヶ月間フィリピンの山村に滞在し、村人とともに水道や橋、道路建設を行っている学生団体です。
春の長期休みにリーダーはじめ数人の学生スタッフで1ヶ月間渡航し、夏の活動地や活動内容を決める下見を行っています。
 
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先日、今年のキャンプリーダーと食事に行く機会がありました。
自分がリーダーだったのが2008年なので、あれから8代。今も活動が引き継がれている、そして8年経ってもこのように交流できることに感謝です。
 
彼はまさに、これから夏のキャンプを決める大事な下見へ出発するという状況。
仲間とミーティングを重ねたり、過去の報告書を読んだり現地とコンタクトをとるなど下調べを進めているなか、リーダーならではの悩みや不満は自然と出てくるものです。
 
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少し本題からずれますが、こういう話を聞くときに個人的に気をつけていることはただひとつ。とにかく「理解しようと努める」ことです。
自分の知識や推測をなるべく盛り込まず、目の前の相手の言葉や表情から理解しようと努めるのです。そのためには、理解できるまでとにかく話してもらうしかありません。
 
「それってこういうこと?」
「じゃあもしこうだったらどう?」
「まだちょっとわからないから、もう一回話してみて?」
 
文字だとなんだか冷たい印象が出てしまいますが…笑
こちらが知ろう知ろうと向き合うと、相手もこちらが理解するまでしっかり付き合ってくれます。すると少しずつ少しずつ、話している本人の中で、勝手に整理整頓されていくのです。笑
 
「…で、最初に戻るけど、なんの話なんだったっけ?」
 
こちらが答えを提示したわけではないのに、いつの間にか自身で次のステップを見出していたりするのです。
 
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話を今年のキャンプリーダーに戻しますと、酒を飲みながらそんなやりとりを続けていると、彼はついにこんなことを口にしました。
 
「あめさん、僕は今とても不安です…」
 
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8年前、当時リーダーに名乗り出た俺も、下見を控えたこの時期はとにかく団体のことに時間を費やしていました。
当時はまだまだ団体の体制も整ってなくて過去のデータが属人的で集まらず、ちょうど活動エリアを変えたタイミングで現地とのコネクションも弱い。
いくら準備を重ねても、「わからない」が消えることは決してありませんでした。
 
「活動地が決まらなかったらどうしよう…」
「自分の代で活動が途切れてしまったら…」
「自分たちに何ができるんだろう…」
 
考えれば考えるほど、目の前の準備に取り組むことしかできませんでした。
 
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当時、お会いしたことはないけど団体内で名が通っている、自分より8〜9歳上の先輩がいました。大学でフィリピンの研究をされていて、今では講義を持っていたり本を出版されている団体の先輩です。
その時は名前を知っているだけで直接のやりとりはなかったのですが、間の先輩に繋いでもらい、下見を前にしてメールをするようになりました。
 
これはまたとないチャンス。フィリピンのことや団体のこと、わからないこと知りたいことをたくさん教えてもらいました。
そんな先輩のサポートもあって、調べても見つからなかった情報や事前に知っておくべき注意点など、下見に有益なアドバイスをたくさん得ることができました。
 
しかしそれでも下見の出発が迫るにつれ、あれは大丈夫だろうか、これに漏れがあるのではないか、頭の中がぐるぐるぐるぐる止まりません。
そしてついに俺はその先輩にこうメールします。
 
「正直、不安でたまりません…」
 
すると先輩はこう返してくれました。
 
「不安に感じない人を、僕は信用しません。」
 
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重要度も緊急度も高いことに日々追われていると、「価値観」とか「自分の思い」とかがついつい置いてけぼりになることってありませんか?
 
でもたった今ぶち当たっている壁って、近すぎて高く見えてるだけで、案外距離をとってみると壁の向こうに進む回り道に気付けたりしませんか?
 
重要度は高いけど緊急度が低いことって、その人の根底にある価値基準とか行動指針、みたいに言い換えることもできたり…?
 
そこにあえて自身で向き合ってみる、相手に気付かせてあげられる、そんなコミュニケーションが世の中をちょっぴりポジティブにさせてくれるのかもしれません。
 
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「あめさん、僕は今とても不安です…」
 
そんな時、俺は必ず自分がリーダーだった時の話をします。
 
「その先輩の言葉で、自分を信じることができたよ。」